◎生活保護者などの雇用を実現!○
◎公民連携で「自立支援施設」整備に国の事業導入○
◎寿地区で民間が支援活動○
横浜市の寿町を舞台に、ニート・ホームレス支援などを行う民間組織が活動施設整備を計画、国の補助制度を知り、市へ協力要請、民間の熱い思いを汲んだ市共創推進事業本部スタッフが熱意に応え庁内調整を行い、実現した事例がある。「高齢者・ニート自立支援施設整備」のプロジェクトだ。「共創フロント」実現化事例第1号にスポットを当てる。
寿地区でニートなど若者支援活動を進める㈱K2インターナショナルジャパン、同じくホームレスなどの支援活動を進めるNPO法人さなぎ達は、それぞれ自立支援(ジョブトレーニング)施設の飲食店を設置した。K2は2008年11月「お好み焼きころんぶす」、さなぎ達は2009年4月「さなぎの食堂」を、それぞれオープンさせ、運営している。「ころんぶす」では18人、「さなぎの食堂」では3人(2011年2月現在)が、それぞれ雇用され、ジョブトレーニングが展開されている。
両施設は、寿地区にあった旧施設を改装した。建設費は各1500万円。資金は、厚生労働省「地域介護・福祉空間整備等の交付金及び地域介護・福祉空間推進交付金」(※)を活用した。国の同補助事業情報をキャッチした民間サイドを、市共創推進事業本部が調整・支援する(正式には市の公募に申請)ことでプロジェクトが成立した。
さなぎ達・K2と一緒に寿地区で活動するコトラボ合同会社(安宿・ホステルビレッジを運営)代表の岡部友彦さんは「知り合いから厚生労働省の補助事業の話を聞いた。申請主体は地元自治体が条件。市へ相談したが、対応してもらえなかった。1度あきらめかけたが、別に相談していた共創推進事業本部の方が市役所内を走り回ってくれ、良い担当の方を見つけていただいた」と振り返る。
同事業を支援した共創推進事業本部は「NPO・市民活動は、なかなか既存の枠にあてはまらない。今の制度・組織の枠内で対応できないと支援できないと考えてしまいがち。必要ならば制度・組織の枠を変えていくというマインドがなければ民間のニーズに応えられない」と語る。
◎横浜寿地区に見る日本の近未来の問題とは?○
さなぎ達・K2の活動は寿地区にある社会問題の解決を目指すことをテーマに始まった。寿町には約6000人余の生活保護者がいるという。また、寿地区が中心エリアとは異なるものの、不登校児・ニート問題も存在した。
K2の岩本真実さんは「私たちが活動を始めた20年前に比べ、不登校問題は様変わりしている。不登校の置き去りから引きこもり、若者の不就労、貧困、ホームレス、DVなど課題が折り重なるようになってきた」と厳しい事態に触れる。
社会問題に対し、さなぎ達は2001年、NPO法人化、寿地区および周辺地域の路上生活者および路上生活に至るおそれのある方を対象に、衣食住と医療・職の面での支援活動を進めてきた。K2は1989年から任意組織としての活動をはじめ、不登校児の自立支援などを推進してきた。10代の青少年が中心だった支援が20代、30代と年齢層が広がり、また若者ホームレスなど家族からの支援が受けられない若者もサポートするようになってきた。両民間組織の活動は重なることが多くなった。
K2の岩本さんも「生活保護家庭の第二世代の若者達が自分の力で働き出す事は、家庭の収入が減ってしまう可能性もある。制度が若者達の自立を阻害するような事になっているケースもあるのではないか?」とさらなる問題を提起、現状の行政制度に限界のあることを指摘する。
岩本さんは「支援した若者の中には、生活保護から脱出し、自分の力で歩き出した若者もいる。彼が自分の力で働くまでには何人もの支援者や行政の担当者、専門家がかかわり、いくつものステップを経て丁寧にやってきた。そして、働き始めてからも緩やかにサポートする事が大切」と述べた。
最後に岡部さんは「今の日本は仕組みを変えていくことが求められている。これを民間の力だけでやることは無理。行政も自ら変えることには限界がある。官民の協働作業が必要になる」と締めくくった。
※ 厚生労働省=高齢化の進展などに対応、公的介護施設などををはじめとする介護基盤整備が課題となる中、市町村・都道府県が作成する計画に基づく事業経費に対しての交付金制度。17年度創設。
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