◎全国初か?!都市型、市全域対象○
◎北本市が23年度から「デマンドバス」本格導入○
◎23年3月に委託企業選定○
◎テスト後のアンケートでは9割が引き続き利用したい!○
(埼玉県)北本市(人口7万人※1)は23年度から「デマンドバス」(※2)の運行を始める。約2600万円の予算計上を見込んでいる。22年度内には委託する民間企業を選定する。市担当は「都市部において、市全体を対象としたデマンドバスは全国的にもめずらしいのでは」と説明する。
北本市は23年度から「デマンドバス」の運行を本格実施する。23年度予算案には約2600万円を計上予定で、23年度からの5年間の予算約1億3000万円(債務負担行為)計上も行い、同額は22年12月議会での議決も受けている。22年度内(23年1月~3月)には委託企業を選定(契約は単年度ごとの見込み)、23年度からの実施に備える。
市は国土交通省の「地域公共交通活性化・再生総合事業」を受け、21年度「北本市地域公共交通総合連携計画」(22年3月公表)を策定、同時にテスト運行も行った(21年10月~12月)。「連携計画」に基づき22年度で実証運行(試行)を行っている。実証運行は22年4月から23年3月末まで。同運行では具体的に民間企業に委託、受託企業が3台の車両で試行している。受託企業は、ロイヤル交通㈱(鴻巣市)がワンボックス車両2台、熊通タクシー㈱(北本市)がセダン1台を、それぞれ自ら用意、市民に運行サービスを提供している。
同市のデマンドバスは、前提として市への登録が必要。現在の登録者は3981人(23年1月31日現在)。登録者は利用する場合、予約が必要で、1週間前から当日1時間前までに申し込む。利用者が多い場合、断られる場合もある。申し込みは直接、受託企業へ電話(FAX、パソコンなど電話以外は受け付けない)、オペレーターが対応する。申込者の電話番号を聞き、パソコン上で登録の可否を確認後、日時・人数・乗降場所を聞き、運行可能であれば契約が成立する。当日、バスは利用者宅に迎えに行き、乗合を経ながら、目的地へ送る。運賃は300円(片道、身障者半額などの条件あり)。エリアは北本市内のみ。乗降場所は、登録者の自宅と、市内共通乗降場500カ所を設定してある。
21年度のテスト運行では2919人が利用、60歳以上の高齢者が約8割を占め、目的は病院・医療施設が1番多いことが明らかになった。またアンケート調査(2000世帯、回収率35%)では、「引き続き利用したい」が90%を超えた。
コスト面では22年度実証運行は2社3台のバスにかかる経費(想定)が2378万円、これに対し運賃収入が397万円、差額1977万円は市の持ち出しになる(実証運行までは国から2分の1補助、本運行に対する補助はない)。
本運行では、落札した民間企業が見積もった金額(経費+利益)から運賃(民間の収入)を差し引いた差額を市が民間に対し100%負担する。
乗合調整などを含めたデマンドを支えるコンピューターシステムは、東京大学などが開発したものを活用している。掛かる経費は年間150万円程度。
市はデマンドバスについて「導入は路線バスで埋められない交通空白地域を埋めることなどが目的。全国的に浸透しているコミュニティーバス(※3)も当初検討したが、高齢者などが利用しにくく、経費もかかることがわかった。デマンドも市の持ち出しにはなるが、コミュニティーほど経費は掛からないと判断した。背景となる法律(道路運送法)も改正され、当市のような都会エリアでも運行が可能となり、導入を決めた。デマンドはコミュニティーバスより市の持ち出しが少なくなる上に、より交通空白地域を埋めることが出来るため、利用者の満足度も高くなる」と導入理由と、そのメリットに触れる。
一方課題について市では「一般的にはタクシー運行とバッティングする。地元に業界があれば、そことどう折り合うかが1番の課題だ」と指摘する。
※ 1北本市のバス運行状況=路線バスは4路線(北本駅西口~北里メディカルセンター病院、北本駅西口~北本団地、北本駅東口~北本高校・富士重工業・工業団地、鴻巣免許センター~桶川駅東口)、コミュニティバスフラワー号(鴻巣市の運行)が2路線(北本駅西口~鴻巣駅西口、北本駅東口~鴻巣駅東口)あった
※ 2デマンドバス=複数の利用者の移動に関する要望に応じ、その都度、運行経路や時刻表を決定して運行する乗合型交通手段
※ 3コミュニティーバス=バスより輸送規模が小さい生活支援交通のうち、一般乗合型の定時定路線の運行形態をとる交通手段。1995年に東京都武蔵野市で導入された「ムーバス」から一般的に認知されるように
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